【絵の具について】

メーカーも色々ある絵の具ですが、個人教室で独自に配合しているものもあるようです。ほとんどの色が800〜830度前後の温度で見たとおりに発色しますが、焼成前後で色が変化するものや、混色出来ないもの、焼成温度が特殊なものもあります。同じ名前の色でもメーカーにより格差があるので、購入時には粉の色・名前ではなくカラーチャートを参考に選ばれることをお勧めします。また、絵の具の鉛成分の少ない「低鉛絵の具」や、酸に強い「耐酸性絵の具」もあります。

通常の絵の具とは少し性質が異なる色について、少し触れておきましょう。

 

*マロン・ルビー系*焼成前後で色が変わります(中にはほとんど変化しないものもあります)。粉ではくすんだ茶、もしくは黒がかったエンジで、焼成後は派手な色になります。含金系なので、少し粒子が粗いこともあります。厚く塗ると焼成中の不完全燃焼により、茶色く変色するケースがまれにあります。また、他色より厚塗りによるはがれが生じやすいので、厚塗りに気を付けましょう。

 

*ブルー系*粉の時よりも、焼成後おちついた発色になる色もありますが、ほとんどの色は見た通りになります。混色による彩度の低下が著しいので、きれいな色を出したい時は単独で使われることをお勧めします。

 

*ホワイト*混色可の「ミキシングホワイト」と「ホワイト」があります。透けない白にしたい時は「ホワイト」を使いますが、混色による変色に注意が必要です。

 

*グリーン*鮮やかな黄緑に、まれにカドミウム成分の絵の具があるので注意します。粉の時はくすんだ緑なのに、焼成後は明るい黄緑になり、薄く塗ると色が飛ぶものがそうです。

 

*オレンジ・レッド系*その色に対するきちんとした知識が無いと使用が難しい色です。大きく分けると「派手な発色のセレン・カドミウム成分の赤」と、「茶色がかったアイアン(鉄)成分の赤」に分かれます。

中焼きをはさんでも、別の色を乗せるとせっかくきれいに発色した色が変色します(黒などの暗い色ならば可)。粉では区別がつかないので、濃淡をつけてテスト焼成を800度で行い、左下写真上のように濃淡が出ればアイアン系、下のように薄い層が飛べばセレン・カドミウム系となります。アイアン系と普通の赤っぽい茶の判別は、黄色と混色すると色負けがおこる場合、アイアン系となります。詳細な使い方は通信販売中の「赤の絵の具の使い方」をお求め下さい。

特徴 セレン・カドミウム系(図下) アイアン(鉄)系(図上)
色味 派手で明るい やや茶色っぽい
濃淡 不可。ベタぬりが望ましい。 可。
焼成温度 低温(760-700度) 通常(800度前後)
特徴 薄塗りによる色飛びがある。 焼成回数が増えると黒茶っぽく変色する。
混色 同じ系統の成分赤のみ可。他色が少しでも混ざるとグレーっぽく変色。 同じ系統の成分赤ならば可。他色とのぼかしに多少耐える。

海外ペインターの絵の具・カラーチャート

日本人に人気の「ポーラ・コリンズ」「サン・ドゥ ポートレートカラー」については全色見本を制作しました。お二人ともカラーチャートが存在しない先生なので、どの色がどんなものか購入するまでわかりませんでした。海外通販などの色の参考、教本を見ての制作にご利用ください。

「ポーラ・コリンズカラー」2003年現時点での黒白を除く全色
左上から、AntiqueGreen,AppleGreen,
BlackGreen,BloodRed,Carnation,Chartreuse
2段目DarkBlue,DeepBlueGreen,FlagBlue,
GoldGreen,GreyGreen,MallardGreen
3段目MixingYellow,MossGreen,
Ochre,PersianRed,Pompadour,RichBrown
4段目RoyalViolet,Ruby,RubyPurple,
ShadingGreen,SoftRose,TurquoisShading
5段目VioletofIron,WarmGrey,YellowBrown1,
YellowBrown2,Heliotrope,Pansy Purple

6段目Celadon

「SanDoポートレートカラー」2000年現時点での全色

左上からDeepBlue,TurquoiseBlue,BlueShadow,

TenderShadow,OliveBrown

2段目IndianBrown,WarmYellow,WarmIvory,

ReflectedLight,WarmRed,OrangeRed

3段目PersianRed,PinkCheek,IronRed,

WarmShadow,AuburnBrown,BrownEyes

4段目DeepMahogany,DarkBrown,ShadowGrey,

BlackGreen,RichBlack

「Jane Marcksポートレートカラー」2003年までの全色
左上から、Pompadour,Flesh1,Light Red,
Reflected Light,Warm Shadow
2段目Violet of Iron,Blonde Flesh,Ivory Flesh,
Flesh Shadow,Transparency,Rich Brown
3段目Mahogany,Hair Brown,Dark Brown,
Black,Warm Grey, Rembrant Brown-Green
4段目Black Green,Dark Blue
Cool Shadow, Baby Blue

【おまけの話・絵の具の毒性について】

絵の具には「有鉛」とか「耐酸性」の表示があるものがありますが、これは絵の具の毒性についての話になります。酸に弱い色としてブルーが上げられますが、早速実験してみました。左画像の左が「低鉛・耐酸性」で、右が「有鉛」です。横の黒線より上が焼成したままもの、下がしぼりたてのレモンをキッチンペーパーに浸したものを3時間程放置したものです(陶板に830度40分キープ。スキャナー読込みのみで画像修正なしです)。

右の有鉛は、明らかに変色が見受けられます。また、左の低鉛耐酸性も画像ではわかりにくいですが、右同様やや粉を吹いたように変質していました。また、金井景子が日常使用しているせっけん入れの耐酸性マロンも、石鹸液が溜まる部分の色が明らかに退色しています(アルカリ耐性では無い、ということです

 

有鉛絵の具の描き易さ・彩度の高さは大変魅力的ですが、描いた器を日常に使用したり、お友達にプレゼントする時には、酸・アルカリの食品(果物・ドレッシング等)が入る箇所には絵は付けないか、せめて耐酸性・低鉛の品を使用したいものです。今回の実験では830度で焼成していますが、低温温度では更に変質が加速すると考えられます。

2002/7/16 金井景子制作(2003/9/17色見本修正)

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